アンティークドールってやつだろうか、これは……。
ずいぶんと作りこまれた人形のようだ。
ヘッドドレスひとつとっても上質な素材にしっかりとした縫い付け……これでもかってぐらい精巧に作られている。
【ジュン】「なんて丁寧に仕上げられているんだ……」
素体の肌はちょっとした傷もないほど滑らかに加工されていて、髪も艶やかでサラサラ……。
まるで人形という言葉がもつ無機質さが感じられない。
【ジュン】「眼とか開かないのかな……? 逆さにするとか……」
軽く持ち上げて、ひっくり返してみる。
【ジュン】「あっ……」
……やっぱり、履いてるのか。
【ジュン】「――って、ボクは何をしているんだっ!」
窓を突き破った物体の正体は、見慣れた茶色い鞄だった。
【ジュン】「ま、まさか、これって……」
鞄の中から音がする。
【翠星石】「ふゆ……イタイです……」
鞄の中から声が聞こえる。
【真紅】「あなたは……!」
鞄の中から……長い黒髪の人形が出て来て、真紅に抱きついた。
【翠星石】「真紅っ」
【真紅】「翠星石……!」
【翠星石】「会いたかったですぅ、真紅ーーー!!」
【翠星石】「ふえぇええん、真紅ぅー!」
目の前の光景にボクは思わず息を飲んだ。
大きな鏡がまるで水面のように一瞬光を放ったと思った次の瞬間――
鏡の中から折れそうに細く青白い腕が飛び出してきた!
【真紅】「1分12秒遅かったわね、ジュン」
真紅は気づいてないようだ。
すぐ後ろからまるで人形のような女の子が……いや、人形かもしれない!?
【ジュン】「真……紅……い、今……後ろ……鏡に……」
真紅がゆっくりと視線を鏡へと向けた瞬間――
黒い羽根をまき散らしながら、一体の人形が鏡の中から飛び出してきた。
【水銀燈】「お久しぶり、真紅」
【真紅】「…………」
いったいどうなってるんだ……!?
真紅以外にも生きてる人形がいたなんて……!!